欧米でベストセラーとなった同名の小説「縞模様のパジャマの少年」の映画化。「ブラス!」で有名なマークハーマン監督がホロコーストをテーマに他作品とは異なるアプローチで美しい映像と共に描き、たくさんの賞を受賞した作品です。
第二次世界大戦下という背景ながら、この映画には暴力や銃撃戦などの生々しいシーンはありません。しかしながら視覚的ではなく感覚的に届けられるメッセージと怒涛の勢いで流れる救いようのないエンディングは心の中に言葉にならない何かを残します。
この映画はナチやホロコーストの真実や残酷さというより、人間の根底にある無意識を描くことにより、その罪深さと問題の根本を投げかけています。
主人公はとても無邪気な8歳の少年ですが、目前に広がる数々の現実を常に楽観的に捉える彼の姿は無知であることの代償を問いかけます。強制収容所の所長である少年の父は話が進むにつれ変わっていく形相から、たとえナチの将校であっても何かしら心に疑問を抱えながら現実との矛盾に苦しんでいたのではないかと思わせます。
そして、収容所の目的を知り夫を非難するにも関らず、何も行動を起こせないまま精神を患ってしまう少年の母。父の部下に恋心を抱き次第にナチに染まっていく少年の姉。隣国へ亡命した父の存在を隠し、その後ろめたさから使用人であるユダヤ人を執拗に攻撃する父の部下。普通の人間が普通にもってしまうような彼らの心理は、人の心に存在する影を映し出しているように感じます。
そうした現代の私たちも持ちうる感情や心理を描くことにより、この作品はナチズムに問題があるという角度からではなく、無知であること、何が正しいかがわかっていながらも行動に表せない矛盾や後ろめたさといったもっと本質的なものに真の問題となるものが潜んでいるのではないかと訴えているような気がします。
そしてそれが私たちにも理解できる感情であればあるほど、もしかしたらホロコーストは形を変えて現代の私たちの周りでも世界のどこかでも今現実に起こっているのかもしれないし、また同様のことが起こりうるのかもしれないと示唆しているようにも感じます。
きっとホロコーストは、ある限られた場所の限られた時代、限られた人種に起こった歴史の一片なのではなく、今なお続く無知からくる偏見や人種差別、人間が持つ心の闇がいつの時代でも最も人を傷つけるものであり悲劇の根本なのだと思います。
You must be the change you wish to see in the world.
「あなたが望む世界に、あなた自身がなりなさい」
マハトマ ガンジー